ダイエットと科学②

「ダイエットに魔法はあるか」

ダイエットに関する情報は本当にたくさんあります。病気以外でも外見上や肥満を良しとしない風潮など、とにかく痩せるということが至上命題のようになっており、さらに簡単に達成できるものではないことから、その心理を突いたいかがわしい商品なども見受けられます。その中で、意味のあるダイエットとの基本は何なのか。

摂取エネルギーを減らし、消費エネルギーを増やす

これだけです。基本と書きましたが、応用はありません。これが基本でありすべてです。100人中100人がわかっている、知っている内容ですね。みなさん知識はあるわけです。ただ、意識が無い。どうすればよいかはわかっているけども、それをする決断がつかないわけです。肥満などで栄養指導を行ったり、受けた方はおられるでしょうか。大抵は、食生活や運動状況などを聞いて、エレベーターではなく階段を使った方がいいですよとか、ビール2杯のところを1杯にしましょうとか、おおよそこういう指導だとおもいます。正直なところ、このような指導はほとんど意味がありません。なぜなら最初に述べたように階段を使うとかビールを減らすとかは、摂取エネルギーを減らして消費エネルギーを増やすことの延長線上のことでしかないからです。すでにわかっていることを繰り返すのはあまり良いとは思えません。同じ指導をするなら、肥満によって引き起こされる病気と治療のつらさ、金額などの面をリアルに伝えるほうがより説得力(意識を持たせる)があるように思います。
もう一つ別の視点から考えてみましょう。飲むだけで痩せていく、という宣伝がされている商品があります。それが実際効果があるかどうかは試したことも無いので評価は避けますが、仮に本当だとして考えられる作用機序はどのようなものでしょうか。ダイエットの基本に照らし合わせるなら、摂取エネルギーを何らかの方法で吸収させないようにしているか、運動することなく消費エネルギーを増やしていることになります。
前者では必要な栄養素だけ摂取しエネルギーの元だけを非摂取にするような都合の良い作用があるのかどうかは疑問が残ります。もし必要なものも吸収されなければ、健康な状態は保てないと思われます。
後者は基礎代謝を「必要もない」のに無理やり上げていることになります。体が常に軽い運動状態を維持するようなもので、動悸が激しくなったり、発汗がひどくなったり、疲れやすくなると予想されます。似たような示す病気に甲状腺機能亢進症(バセドウ病)があります。いずれにせよ痩せるなら基礎代謝を上げてエネルギーを消費すればよいのではないかと思われるかもしれませんが、これには落とし穴があります。それはエネルギーは脂肪からのみ得ているわけではないからです。つまりタンパク質もエネルギー源のひとつです。タンパク質より脂質のほうが同じ重さでもエネルギー効率がよいので、ヒトは脂肪という形で蓄積しています。この余分な脂肪だけを消費してくれるならよいのですが、タンパク質も分解してエネルギーとして利用してしまいます。そうするとどうなるか、タンパク質の豊富な筋肉がやせ衰えていきます。運動をせずに基礎代謝だけを上げている状態では、筋肉を鍛えることができずに無くなる一方です。痩せはするかもしれませんが、非常に虚弱な状態になり危険と思われます。
以上のような理由により、仮に飲むだけで痩せるようなものが実際あったとしても、それは危険なものだと予想できます。これから科学が発展して可能になったとしても、サプリメントというより医薬品の類になるのではないでしょうか。医薬品ではれば厳正な試験があるので、危険性も含めて検討されると思いますが、現状サプリメント感覚で摂取できるもので、それほどの効果を安全に供給できるとは思えませんし、できないならウソということになります。サプリメントは医薬品ではなく食品の一種であるため、グレーな表現をしても見逃されることがあり(よほどひどい場合は別ですが)、それがまかり通っている状況でもあります。もちろん途中で述べたように、そのような商品が本当に効果があるかどうかは試したわけではないので評価はできないことだけ添えておきます。
では実際にどうやってダイエットを進めていくかです。ダイエットの基本に乗っ取ってがむしゃらに行っても良いかもしれませんが、もう少し自身に合ったダイエットを考えていく方法を次回のコラムで考察してみます。