栄養コラム」カテゴリーアーカイブ

サイトカインストームと酪酸菌

新型コロナウイルスの影響は未だに脅威ではありますが、科学的にわかってきたこともあります。基本的には肺炎がクローズアップされていますが、ウイルス感染による炎症、とくにサイトカインストーム(免疫暴走)の影響が注目されています。
サイトカインはウイルスに感染した細胞が出すタンパク質の一種で、炎症等により外敵の侵入を知らせる役目を担っています。しかしそれが過剰になると、必要以上に免疫システムが動員され、自分自身の体すら傷つけてしまう状態(免疫暴走)が起こってしまいます。その結果、血管内に血栓等ができ、脳梗塞、心筋梗塞、多臓器不全などが起こるリスクが上がります。
一方でこれらの免疫反応をコントロールするシステムも存在し、制御性T細胞(Tレグ)と呼ばれています。これらが増えることで必要以上の免疫反応を抑えることが可能になるといわれていますが、最近の研究で腸内細菌が生産する「酪酸」がTレグを増やすと考えられています1)。
つまり「酪酸」を生産する酪酸菌を増やすことで、Tレグを増やし免疫暴走を抑えることができると予想されます。酪酸菌のを増やすためのエサとなる物質は食物繊維や乳製品がありますが、サプリメントとして当社では「酪酸菌 16種類の乳酸菌」を扱っています。また、同じく当社で扱っている「卵殻膜」にもサイトカインを抑制する効果があることが確認されています。新型コロナウイルスに限らず、感染症に対する自己免疫強化にぜひお試し下さい。

資料) サイトカインストームを抑える卵殻膜&酪酸菌

1) Furusawa, Y., et al. Commensal microbe-derived butyrate induces the differentiation of colonic regulatory T cells. Nature, 504, 446–450 (2013)

新型コロナウイルスに対して

重篤な肺炎を引き起こす可能性のある新型コロナウイルスについてはすでに理解されていることと思いますが、現在のところ有効な治療法は無く、対処療法となっております。つまり、罹るか罹らないか、重症化するかしないかは、個人の健康状態に左右されると考えられます。感染対策は手洗い等すでに報告されている通りですが、栄養学的には何が有効かをご紹介いたします。

新型コロナウイルスに関して

新型コロナウイルスに対抗するIgA抗体

上記資料に紹介されている免疫系の活性化に特に有効なラクトフェリン、リジン、L-グルタミンは当社でも販売しております。

ラクトフェリン フェカリス菌

シスチン グルタミン リジン

新型コロナウイルスに限らず、インフルエンザ等の感染症対策にご検討ください。

少量の飲酒でもガンのリスクが上昇

東京大学公衆衛生学の研究グループが少量の飲酒であってもガンのリスクが上昇することを全国の労災の入院患者のデータベースから導きました1)。
それによると、もっともガンに罹患する割合が低かったグループが飲酒をしないグループでそれ以降は飲酒する量に比例してリスクがあがるようです。
もともと少量のアルコールの摂取は循環器系の病気(心疾患・脳血管)に対してJカーブ(摂取がゼロよりも少量の摂取のほうがリスクは低くなる)になることは報告されていますが、ガンに対しては意味がないようです。もちろん心・脳疾患系の予防目的でアルコールを摂取することは推奨されない(食生活や運動等で改善すべき)ので、タバコと同様に控えるべきといえるでしょう。
ただ科学的には以上の結果ですが、飲酒が生活習慣や精神的なストレスに対する緩和にどれだけ関与しているかは未知数ですので、飲酒がガンリスクを上昇させることを認知しつつ上手に付き合っていくことをお勧めします。

1) Zaitsu,M. et.al. Light to moderate amount of lifetime alcohol consumption and risk of cancer in Japan. Cancer 2019.

医学(薬学)と栄養学の役割

一般的な薬と栄養のイメージは、薬(病気だから飲むが、副作用が心配、なるべく飲みたくない)、栄養学(そもそも効果があるのかわからない)、このようなところだと思われます。
当社は栄養学を用いて健康を管理することを目的としていますが、医学と相反するものではなく、健康に対するアプローチの違いに過ぎないと考えています。つまり、医学と栄養学はどちらかを選択するようなものではなく、どちらも必要なことだと言えます。

医学と栄養学はアプローチの仕方が違うと書きましたが、具体的にはどのようなことになるか、会社を例えにして表現します。

図では社員が仕事(命令)を受けて上司へと伝えていきます。最終的に社長が了承することで仕事が実行されます。このようないくつもの段階を経て伝わるものをカスケード反応と言います。怪我をした時の出血を止める作用もカスケード反応によって行われ、その過程は十数個ほどあります。本来出血という重大な怪我に対して十数個もの反応を経ないと止血しないというのは迅速さには欠けますが、仮に数個の反応で完了する場合、必要が無い或いは間違いで命令を伝えたとき、それを間違いとして処理する前に命令が出てしまったら、血栓が体に多く作られ心臓や脳に梗塞を引き起こすかもしれません。そう考えるとひとの体の防御機構の優秀さがわかる気がします。
しかし、何らかの原因でこれらの仕組みが上手く働かなくなった場合、手をこまねいてみているわけにはいきません。

図では社長に直接働きかける友人(薬)がいます。本来ならば社員より伝わらなければ実行しない社長ですが、友人の頼みは断れないようです。直接頼んでいるため、極めて速く実行され、何度も実行してくれるでしょう。どの部分(社長、部長または別の社員)に働きかけるかは薬によって違いますが、ダイレクトに命令を遂行させることが、薬の大きな特徴で、これは栄養にはできないことです。
ただし、薬には副作用があります。

図では他部署の人が予算がないと訴えています。友人の頼みを聞きすぎた社長はお金が無くなってしまった(副作用)ようです。一方社員を見てみると何やら疲れている様子です。おそらく栄養不足によって働くことができなくなっているのではないでしょうか。また課長を見ると部長がいない為、命令が伝えることができずに困っているようです。何らかの原因で部長がいなくなったか、或いは最初から居なかったか(遺伝子疾患等)だと思われます。こういったことも、栄養学では解決しにくいパターンです。

栄養学の本質は最初の図で示したような正常な会社経営(生理活動)を維持することです。それは薬などの一定のリスクを伴うものをなるべく使わない為、という意味もありますが、薬にしても手術にしても、それに耐えられるだけの体力が無ければ、いざ必要な時に手の施しようがない、という事態を避ける為でもあります。そして栄養による体の改善は時間がかかります。迅速に対応しなければならない時は薬を使う必要もあるでしょう。薬と栄養、出来ることと出来ないことを上手く見極め、使用していくことが大事だと思われます。

腸内細菌がトレンド

最近、腸管に寄生する寄生虫が腸内細菌に作用し、肥満を抑制するという論文1)が発表されました。簡単に説明すると、寄生虫が腸内の細菌に作用し、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)を増加させることでUCP1(脱共役タンパク質)の発現を促し、肥満を抑制するというものです。専門的な単語はともかくとして、寄生虫が存在することで肥満を抑制する仕組みを初めて証明した論文のようです。ただ寄生虫が直接体内に作用するわけではなく、腸内細菌を刺激することによって起こるということを考えれば、メインは腸内細菌の在り方ということでしょう。
腸内細菌叢(そう)の研究は近年急激に発展しています。というのも、腸内、特に大腸内は嫌気性(酸素がほとんど存在しない)であり、その環境を実験室レベルで再現するということが困難であり、かつ何百種以上いるといわれる細菌を個別に判別していくのは手間がかかります。しかし遺伝子的に解析する方法が発見され、培養できなかった細菌も解析することができるようになったことが、近年の研究の発展に繋がっています。
栄養学的な視点で見ると、腸内にすでに存在する乳酸菌やビフィズス菌などのいわゆる善玉菌を維持・増やすために、その菌の餌となる食物繊維やオリゴ糖、乳酸菌等の死菌(生菌でもよい)を摂取することが望まれます。現在のところ、外部から摂取した菌(ヨーグルトなど)が腸内で新たに増え始めるといったことは基本的に無いようです。つまり生きて腸まで届く菌といった製品の場合、その菌が腸に届き、排出されるまでの間に人体に有益な生理活性があるということであれば意味がありますが、生きて届き腸内で増殖するわけではないため、注意が必要です。すでに生息しているところに新たに住み着くのは難しいということですね。
これまでの研究により、腸内細菌が便秘や大腸がんなどの腸自体の作用にとどまらず、神経や精神疾患などの一見関連が無さそうなことまでも影響がある可能性が示唆されています。そうすると大腸を切除した人はどうなのか、菌自体に意味があるのか、菌が産生する物質に意味があるのか、それらの物質を特定し創薬できないのかなど、興味が尽きないところであります。今後の研究の進展に期待しましょう。

1)Shimokawa C. et al. Suppression of obesity by an intestinal helminth through interactions with intestinal microbiota. infection and immunity. 2019.

健康食品は似非科学か

最近ある芸人が健康ドリンクで痩せたということが話題になっています。商品の説明には「適度な運動と食事制限を併用した結果」「個人差がある」と書いてあるものの、一般人からするとそれを飲むことで苦労せずに痩せるというイメージを与えるのは当然であり、受け取る側の認識が悪いといってしまえばそれまでですが、それなら科学的検証を表示すべきであるといえます。これがまかり通るのであれば、「ダイエット期間中にペットの餌を変えた」など、まったく本人に関係が無いと常識的にわかることでも相関があるようにいえてしまいます。そのためこういった話題が定期的に出てくるたびに、サプリメントなど栄養学を元にした健康食品が似非科学として認識され信用を失う結果になっています。
現在の日本ではサプリメントを代表とする健康食品の類いの地位は低いといえます。それは上記にも書いたように食品であること(医薬品ではない)から規制の緩さを利用した極めてブラックに近いグレーの表現を使う胡散臭さ、それと自然志向による「栄養は食事から摂る」という意識です。

自然であるということと対極にあるものは、完全栄養食でしょうか。現在の科学で判明している、人に必要な栄養素、ビタミン・ミネラル・タンパク質・脂質等を100%含有した人工食品が存在します。ただし人工食品は、バランスが良すぎる為に必要量に達していないこともあります。例えば鉄欠乏性の貧血の人に必要なのはバランスの良い食事では無く(必要無いということではなく)より多くの鉄分の補給であり、すみやかに不足分を補わないといけません。ジャンクフードなどを摂取するよりは遥かに良い選択ですが、健康を目的とする場合は少々視点が違うかもしれません。
しかし逆説的になりますが、バランスの良い食事・食生活というのは、とどのつまり完全栄養食のバランスに近づけるということと同義になります。むしろバランスよく食事を作っているつもりでも、実際どれだけの栄養素が含まれているかは計算できません。仮に食品栄養成分表を元に算出しても、理論値と実際とでは違いがでます。そう考えると、計算された完全栄養食がいかに優れているか、ということも言えるでしょう。

栄養は食事から摂ることが基本でありサプリメントがこれに代わることはありません。しかし食事からだけでは補えないものがあることも事実です。特に高齢者は若い時に比べると食事量が減ってきます。食事量が減れば、必要な栄養素の摂取量も全体的に減少します。それがまた加齢を促進する、あるいは病気にかかりやすくなる原因になります。必要だとわかっていても食べられない、食事でとるにはあまりにも多すぎる、こういった環境において大きな意味を持ってくるものがサプリメントというわけです。サプリメント自体に定義はありませんが、わかりやすく表現するならば「特定の栄養素を高濃度に含有した食品」といえます。例えば、ブロッコリーはビタミンCが豊富に含まれていますが、ビタミンCのみを摂取することを考えた場合、サプリメントで摂るほうがはるかに効率的です。しかしブロッコリーのその他の栄養成分(ビタミンBや食物繊維など)にも期待する場合、サプリメントは不向きです。食事でできること、サプリメントでできること、これらをきっちり区別し、かつ組み合わせることが、健康を目的とした栄養学を理解することに繋がります。

どのような情報を信じればよいのかは、一般の方はもちろん専門家でも悩むところはありますが、基本的にエビデンス(科学的根拠)や情報元を明示せず体験談に終始する製品は疑問をもつべきです。ただし、栄養素は特効薬では無いので、摂取した、しないで即座に状況の改善に繋がるわけではなく、短絡的に効果の有無を判断するのも危険です。思い込みや偽情報に惑わされない客観的な指標として、当社でもおすすめする「血液検査」から具体的なデータを読み取り、問題点を洗い出し、食事又はサプリメント等で体質を改善し、再度血液検査で結果を考察する。これらが、もっとも科学的な健康食品の評価の指標になりうると考えています。

当社では血液検査や健康問題などの相談を無料で行っております。03-3794-5471またはjuchu@lifecarekk.comまでお気軽にご相談下さい。

ダイエットと科学③

「ダイエットは99%の努力」

ダイエットをするかしないかの指標はほとんどの方が聞いたことがあると思いますが、BMI(Body mass index)を基準に考えます。体重(kg)÷身長(m)の二乗で、この数値が18.5未満で痩せ気味、18.5~25未満で普通、25以上で太り気味と評価されます。もっとも有病率が低くなる数値が22といわれており適正値として定着しています。が、一方で死亡率とBMIの関係を見ると、21~27で全死因が低値になる1)と報告があります。特に男性では25~27で一番低値になるようで、BMIに照らせば太り気味が一番死亡率が低いことになります。有病と死因との関係は複雑でしょうし、健康寿命としてはどうなのかなど、まだまだはっきりしてないことは多いのですが、一概に肥満=悪ではないことだけ念頭にいれてください。ただBMIが30以上の肥満は死亡率を確実に引き上げるので、その方は確実にダイエットを必要とするでしょう。また、痩せ気味であっても有意に死亡率を引き上げるようで、BMIでは正常範囲である20付近でも死亡率が高くなっていき、18.5未満ではさらにリスクがあがります。考えられる原因としては感染症などの体の抵抗力を低下させる疾患に弱いようです。そのため痩せていることが良いという風潮である日本において、それが必ずしも正義ではないことも念頭においてください。
肥満が原因となる疾患に罹った場合は、疾患の種類にもよりますが、糖尿病などでは3割負担で平均年間で7~10万ほどかかるようです。もちろん糖尿病だけがリスクではないので、他の合併症も考えれば、どんどん上がるでしょう。一方で、肥満そのものを治すのに費用は必要無いと考えています。せいぜい体重計(これは重要です)くらいで、努力次第でまったくお金の負担なく治すことのできる、非常にリーズナブルな疾患だと思います。努力に対する動機付け、例えばジムに通う、機械を買う、効果の期待できるサプリを摂る(当社にもあります)等は自身の裁量に委ねる部分はありますが、とにもかくにもまず体重計に乗ってください。

「一か月間、一日一回、必ず同じタイミングで体重を測り、記録する」

まずはこれだけです。最初の一か月間だけ体重だけ測定して記録してください。ただし、朝だったり夜だったり、食事前食事後などばらばらに測るのではなく、まったく同じタイミングで測定してください。服装もできるかぎり同じくらいにします。できれば体重の変動しやすい食事後ではなく、食事前がベストかと思います。体重を測るだけですので、ダイエットの必要はありません。もし若干でも意識してやりたいことがある場合は、一か月間の体重測定と共にやり通してください。この体重測定の目的は、一か月間測定しつづければ、およそ普段の生活習慣を平均して読み取ることができるだろうと思われるからです。外食をとることもあれば、食事を抜くようなこともあるかと思いますが、それらを含めて一か月様子を見ましょう。そして一か月後、測定開始時と比べて体重がどれくらい変動したかを見ます。

体重が減少していた場合、特別な処置は必要ないのではないでしょうか?あるいは無意識のうちに減量を意識していたかもしれません。体重測定だけは継続して様子を見ても良いと思います。
現状維持、体重が増加していた場合、普段の生活習慣を一度見直すべきかと思います。よほど不規則な生活でない限り、生活習慣はおよそ一定の動きを示すと思われるので、そこを改善します。例えば、エレベーター等の使用を階段にしたり、通勤までの歩行速度を早くしたりと、とにかく体に対する負担を増やす工夫をします。

「非効率で燃費の悪い行動を心がける」

最寄りの駅までどれくらい時間がかかるでしょうか?普通に歩けば息が切れるようなことはあまりないと思いますが、早歩き或いは小走りしたら息が切れますよね?同じ距離でも時間を短縮するという行為が、エネルギーの非効率な消費に繋がります。ただ走るほどの高強度な負荷は持続性が無くなるため、早歩きくらいがベストかと思います。エレベーターやエスカレーターは数十キロの体を負担無く上げ下げしてくれる便利な機械ですが、同じ距離で階段を使っただけでおそらく足はパンパン、息も切れ、時間もかかる。現代社会ではまったく非効率な行動ですが、それこそがダイエットには最適です。ただ同じ運動でも水中ウォーキングなどは、負荷をかけられないひとの運動方法としては良いですが、ダイエットを目的とした運動としては弱すぎるでしょう。浮力が体の体重分の負担を軽減するため、泳ぐにしてもかなり泳ぎこまないと厳しいかもしれません。
そして筋肉をつけるような動きをすることが望ましいです。筋肉自体がエネルギー効率の悪い存在といっても良いでしょう。同じ行動をしても、筋肉がある分どうしても消費エネルギーが増えてしまいます。そのため筋肉をつけることが基礎代謝を底上げすることにつながります。
食事面ではアルコールを減らす、ご飯を半分にする、間食を減らすか無くす、等です。基本的に炭水化物系のエネルギー源となるものを減らしますが、ゼロにする必要はありません。また肉などの一見太りやすいと言われるものを減らす必要はありません。むしろ運動負荷をかけるなら省いてはいけない重要なタンパク源です。植物性タンパクだけでは補えない栄養素がたくさんあります。ただ調理方法では揚げ物など油を豊富に使う調理は避けた方が良いと思われます。
繰り返しますが消費エネルギーを増やして、摂取エネルギーを減らす、これがダイエットの基本です。体重の減り方は個人差があるので、一概には言えないですが、普段の生活からなるべく頑張っているのになかなか減らない人も、無駄と思わずに続けてください。ヒトは永久機関ではないので、増やした負担分は必ずエネルギーとして消費されており、摂取エネルギーが減っているなら、アンバランスによりいずれ体重は減っていきます。減らない原因はおそらく脂肪が筋肉に変換される(脂肪よりタンパクのほうが重たいです)からだと思われます。いずれこれらのトータルバランスが崩れた時(良い意味で)必ず減っていきます。このバランスは個々人で違うので指導は難しいです。だから体重を測定して、自分自身のバランスを認識します。なので、体重測定は何よりも最重要です。
体重が減った後のリバウンドの心配は比較的少ないと思われます。基本的にリバウンドは運動をせずに食事のみを削減した場合に非常に起こりやすいものです。体が飢餓状態になっているので、体重を減らしても普通の食事に戻したら、体は全力で栄養を吸収しようとします。運動による代謝の底上げもしてないので、元に戻るのは必然かもしれません。それに比べれば、生活習慣から改善する努力型のダイエットは、仮に元の生活に戻したとしても、一度体は変化しているので容易に元にもどりません。だから生活習慣により増加した体重を減らすのは大変なのです。
最後に、ヒトは無駄に脂肪を貯めているのではありません。ほんの少し前までは飢餓と隣り合わせの時代であり、それに対処するための生物の知恵です。生理的な現象を安易な方法で解決できるとは思えませんし、できたとしても安全とも思えません。生理的に増えたものは生理的に減らしていく。そのため都合や欲求を抑えて努力する必要があるのです。以上で長くはなりましたが、3回に渡った科学的に考えるダイエットの話はこれで終わりになります。

1) Sasazuki S, et al. Body mass index and mortality from all causes and major causes in Japanese: results of a pooled analysis of 7 large-scale cohort studies. J Epidemiol. 2011;21(6):417-30.

ダイエットと科学②

「ダイエットに魔法はあるか」

ダイエットに関する情報は本当にたくさんあります。病気以外でも外見上や肥満を良しとしない風潮など、とにかく痩せるということが至上命題のようになっており、さらに簡単に達成できるものではないことから、その心理を突いたいかがわしい商品なども見受けられます。その中で、意味のあるダイエットとの基本は何なのか。

摂取エネルギーを減らし、消費エネルギーを増やす

これだけです。基本と書きましたが、応用はありません。これが基本でありすべてです。100人中100人がわかっている、知っている内容ですね。みなさん知識はあるわけです。ただ、意識が無い。どうすればよいかはわかっているけども、それをする決断がつかないわけです。肥満などで栄養指導を行ったり、受けた方はおられるでしょうか。大抵は、食生活や運動状況などを聞いて、エレベーターではなく階段を使った方がいいですよとか、ビール2杯のところを1杯にしましょうとか、おおよそこういう指導だとおもいます。正直なところ、このような指導はほとんど意味がありません。なぜなら最初に述べたように階段を使うとかビールを減らすとかは、摂取エネルギーを減らして消費エネルギーを増やすことの延長線上のことでしかないからです。すでにわかっていることを繰り返すのはあまり良いとは思えません。同じ指導をするなら、肥満によって引き起こされる病気と治療のつらさ、金額などの面をリアルに伝えるほうがより説得力(意識を持たせる)があるように思います。
もう一つ別の視点から考えてみましょう。飲むだけで痩せていく、という宣伝がされている商品があります。それが実際効果があるかどうかは試したことも無いので評価は避けますが、仮に本当だとして考えられる作用機序はどのようなものでしょうか。ダイエットの基本に照らし合わせるなら、摂取エネルギーを何らかの方法で吸収させないようにしているか、運動することなく消費エネルギーを増やしていることになります。
前者では必要な栄養素だけ摂取しエネルギーの元だけを非摂取にするような都合の良い作用があるのかどうかは疑問が残ります。もし必要なものも吸収されなければ、健康な状態は保てないと思われます。
後者は基礎代謝を「必要もない」のに無理やり上げていることになります。体が常に軽い運動状態を維持するようなもので、動悸が激しくなったり、発汗がひどくなったり、疲れやすくなると予想されます。似たような示す病気に甲状腺機能亢進症(バセドウ病)があります。いずれにせよ痩せるなら基礎代謝を上げてエネルギーを消費すればよいのではないかと思われるかもしれませんが、これには落とし穴があります。それはエネルギーは脂肪からのみ得ているわけではないからです。つまりタンパク質もエネルギー源のひとつです。タンパク質より脂質のほうが同じ重さでもエネルギー効率がよいので、ヒトは脂肪という形で蓄積しています。この余分な脂肪だけを消費してくれるならよいのですが、タンパク質も分解してエネルギーとして利用してしまいます。そうするとどうなるか、タンパク質の豊富な筋肉がやせ衰えていきます。運動をせずに基礎代謝だけを上げている状態では、筋肉を鍛えることができずに無くなる一方です。痩せはするかもしれませんが、非常に虚弱な状態になり危険と思われます。
以上のような理由により、仮に飲むだけで痩せるようなものが実際あったとしても、それは危険なものだと予想できます。これから科学が発展して可能になったとしても、サプリメントというより医薬品の類になるのではないでしょうか。医薬品ではれば厳正な試験があるので、危険性も含めて検討されると思いますが、現状サプリメント感覚で摂取できるもので、それほどの効果を安全に供給できるとは思えませんし、できないならウソということになります。サプリメントは医薬品ではなく食品の一種であるため、グレーな表現をしても見逃されることがあり(よほどひどい場合は別ですが)、それがまかり通っている状況でもあります。もちろん途中で述べたように、そのような商品が本当に効果があるかどうかは試したわけではないので評価はできないことだけ添えておきます。
では実際にどうやってダイエットを進めていくかです。ダイエットの基本に乗っ取ってがむしゃらに行っても良いかもしれませんが、もう少し自身に合ったダイエットを考えていく方法を次回のコラムで考察してみます。

ダイエットと科学①

「科学的であるということの落とし穴」

数十年、或いは数百年前では極一部の富裕層だけに問題であったであろう生活習慣病は現在の日本では万人の問題に広がっています。これだけ規模が広がると当然でてくる様々なダイエットに関する情報ですが、真偽のほどは見極められるでしょうか。今回は本題に入る前に、最近広告を見て気になったことを例にとって説明します。
科学誌にも掲載されてた論文ですが、ある特殊な成分が入った化粧品の効果を調べるために、被験者の顔の片側に塗布し、もう片側には何も塗らず、一か月後に肌の評価をしたところ有意に化粧品を塗布した側の評価が良くなったというものです。しかしこれには気になる問題点がいくつかありました。
まず一つ目に、特殊な成分が入った化粧品を片側に塗る、ここまでは良いですが、もう片側には何も塗っていないことです。つまり、化粧品を塗ったか塗って無いかの比較になってしまい、特殊な成分が入っているかどうかの比較になっていないことです。厳密に試験を行うなら片側は特殊な成分入りの化粧品、もう片側は特殊な成分を入れない化粧品で比較すべきです。
二つ目は観察者(医師など)と被験者の双方に効果がある(と思われる)化粧品の存在がわかっていることです。これは一つ目の問題と重なりますが、片側にだけ化粧品を塗っている為、そちらに良い効果があるに違いないというバイアス(思い込みや隔たり)が生じる可能性があります。そうすると結果に対しても不公平な判断をしてしまうかもしれません。正確に試験するならば、特殊な成分入り化粧品(A)と、特殊な成分のみ省いた化粧品(B)を用意し、観察者は被験者に化粧品の内容を知らせずに渡して片側ずつ塗ってもらい、同時に被験者は観察者に対して、(A)、(B)の化粧品を顔のどちら側に塗ったかを知らせず評価を行う。観察者、被験者双方でバイアスが生じない方法(二重盲検試験)を行うのが最良です。
今回のケースでは化粧品を塗ったほうが良いという結果はおそらく間違いは無いと思われますが、特殊な成分が入っていることを売りにするには科学的根拠が無く、評価方法も適正とは言えない、という評価になります。
そうすると疑問に思いますよね。なぜ適正な試験を行わないのか。論文には触れられていなかったので推測にしかすぎませんが、おそらく行ったのではないかと思われます。研究を行っている者にとっては指摘する要素が多い論文だった為、当然試験を行ったところもそれは認識しているはずです。もし適正な試験を行っていたのならば、なぜそれを発表しなかったのか。これは科学の世界の問題点ですが、公表しないデータはウソではない、という点です。公表したデータにウソがあれば問題ですが、都合が悪いだけでデータそのものにウソがないものは公表しなければ問題が無い(指摘さえされなければ)のです。
今回のケースに当てはめれば、特殊な成分を入れたものと入れなかったものでは差が無かったが、化粧品を塗ったか塗って無いかでは差があった、では商品としてのインパクトは無くなりますよね。本当に自信があるなら適正な試験結果を公表するでしょうし、そうしないならデータを隠していると、見る人が見れば邪推するわけです。
もちろん、隠しているだけなら問題が無い、というわけではなく、チェックする機構はあります。医薬品であれば副作用を意図的に隠したとあっては大問題になります。ただ今回の例は医薬品ではなく化粧品(制限が比較的緩い)であることや、チェックする人に依存する部分、過不足があっても問題が無いと判断されれば論文として掲載されてしまいます。嫌な言い方をすると、適当な内容でも掲載される雑誌は評価が低く、掲載されただけで文句のつけようのない科学論文である、ということでは無いということです。
このように科学的に妥当であるかどうかという判断は一般の方では難しいと思いますが、機会があれば実例をもって、どのような思考が科学的であるかを紹介したいと思います。
次回はダイエットにまつわるウソを排除し、ダイエットに繋がる科学的考察についてお話します。

免疫と栄養学②

「免疫療法の副作用」
免疫細胞の主な役割は不純物や自己以外の外来の排除であるわけですが、自分自身はどのようにして見分けているのでしょうか。
私たちが例えば自分の手を見て、自分の手であるという認識をするには、視覚的なものだったり、動作や感覚などで判断していますが、細胞も自身を認識する仕組みがあるはずです。今回の研究はこのような仕組みを逆手にとった、自分自身を認識しない、という方法でガンを攻撃する方法というわけです。
しかし、自身に対する認識を甘くするということは、間違って本当の自分を攻撃する機会が増えるということに繋がります。いわゆる自己免疫疾患です。
ある種のマウスのPD-1遺伝子をノックアウト(欠損)させると、腎炎や関節炎が起こる1)という報告があります。
別種のマウスではまた別の免疫疾患が見られるわけですが、いずれにしても免疫におけるブレーキの部分を破壊した場合は何らかの障害が生じる可能性があるようです。
ガンの治療と他の免疫疾患の可能性の両天秤になるのだろうと思われます。

「免疫力を高めるとは」
話は戻りますが、ガンに対して自身の免疫力で対抗するということは、その免疫力自体が低ければ効果が薄いことになります。そうすると次は、いかに免疫力を高くするか、ということが重要になってきます。
しかし言葉にすると簡単ですが、免疫力が高い、低いをどのように判断するのでしょうか。
例えば去年は風邪に罹ったのに、今年は罹らなかった、から去年より免疫力が上がったといえるでしょうか。今年はたまたまそういうウイルスや細菌に暴露されなかっただけかもしれません。血液検査で白血球等の数を見ても、採血時の状態で上下するため、極端に高かったり低かったりする以外は、免疫力を測る指標にはならないでしょう。つまり免疫力を一般的な方法で測定することは非常に難しい(研究レベルでは可能なようです)のです。しかしながら、免疫に関する研究は盛んに行われており、今回のノーベル賞の研究のような薬剤により制御するもの以外でも、栄養或いは天然由来の物質で免疫に影響するような研究も行われています。

例えば弊社で紹介している免疫活性の手段の一つにラクトフェリンがあります。詳しくはラクトフェリン・フェカリス菌ラクトフェリンの働きにある説明を見ていただければよいと思いますが、腸内におけるビフィズス菌の活性、細菌やウイルス、寄生虫などに対する抗微生物活性、抗炎症作用など多様な作用2)が報告されています。一般的な食事による接種で現実的なものには牛乳(殺菌前)がありますが、1リットル中に200mg含まれており、これはヒトにおける初乳(1リットルに6000mg、常乳で2000mg)の1/10~1/30程度の濃度です(日本ラクトフェリン学会より一部抜粋)。ラクトフェリンの効果を目当てに10リットルもの牛乳を飲むのは非現実的ですし、他の弊害がでるでしょう。こういった成分の一つがどれくらい免疫に効果があるのかは、個人差の問題もありはっきりしたことは言えませんが、研究において効果が実証されている以上は期待しても良いものだと思われます。
そして、免疫力をもっとも高めるために必要なことは、睡眠不足の解消や食事のバランスなど、日々の生活が非常に大きいということは、言うまでもないかもしれません。

「参考文献」
1)Nishimura et.al. Development of lupus-like autoimmune diseases by disruption of the PD-1 gene encoding an ITIM motif-carrying immunoreceptor.
Immunity.1999;11.141-151.

2) Yamauchi K, Kuhara T. Influence of milk proteins on the intestinal immune system. milk science.2008;56.199-208.